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こぐまちゃん日記


あれこれ考えること、好きなことを綴っていきたいと思います。
by 松葉

つな八

大学生の頃、
新宿本店でアルバイトをしたことがあった。

今でも時たまパパにその時のことを茶化される。
「えりちゃんが1ヶ月だけアルバイトしてたつな八やなあ」と。

どうしてつな八でバイトをしようと思ったかというと
新宿が通学路の途中だったのと、求人広告に「食事付き」とあったからだ。

働き始めて、まず驚いたことは
「食事付き」とあった食事は確かにちゃんと出るのだけれど
その中でつな八で作ったものはご飯だけで、
後のおかずは弁当屋のものだったということだ。

天ぷらの残りとか(それはないか。)
せめて残りの食材で作られるおかずだと思っていたので
弁当屋のケースに入ったおかずを渡された時は
びっくりした。

それからもう一つ驚いたのは、
店から支給される制服に着替える更衣室が
店の中ではなくて、店から歩いて5分程の雑居ビルの中の
一室だったということだ。

店内の大方を客席に充て、
裏方のスペースを切り詰めた結果の苦肉の策だったようで、
更衣室には、一人一人のロッカーはあるものの
建物自体が相当古く、狭くて、暗くて
何度もゴキブリが出没した。

毎日クリーニング屋から届けられる制服が
真っ白で糊がかかっていて清潔なのが、
更衣室の中の古くて汚い様子と対照的だった。

当時は新宿にタイムズスクエアが出来たばかりで
その新しくてきれいな新宿のイメージしかなかったので、
雑居ビルの更衣室に都会の光と影を見た思いがした。

アルバイトの内容は、ホールスタッフだが、
仕事の内容が何段階かに分けられていて
経験のあるアルバイトになると、お客さんから注文を取ったり、
足りない食材を冷凍庫から運んできたりと
何でもかんでもこなして周りからも重宝されるが、
私のように経験がない者は限られたことしか頼まれない。

箸、箸置き、お手拭きなどをセッティングする簡単な作業から始まり、
これにご飯、みそ汁、漬け物の3点セットを運ぶ仕事と
食べ終わった席の片付けをする仕事が加わる。

少し慣れてくると、ようやく天ぷら屋らしく
揚がった天ぷらのお運びをさせてもらえるようになる。

新宿本店はいつも客で賑わっていて、
お客も働いている人もひしめき合っている印象だった。

特に裏方は、人がすれ違うのが精一杯のところを
皆が気ぜわしく働いているものだから、
たかが給仕だったのだけれど、茶碗一つ運ぶのにも
大変だなあと思った記憶がある。

何をするにも元来自称器用、他称不器用な性質で
することなすこと遅いので、
あまり役には立っていなかったのだろうと思う。

アルバイトの他には、パートのおばさんだったのだろうか、
洗い場でずっとお皿を洗っている人や
お勘定の担当の人など、それぞれの役割の人がいた。

アルバイトなのによく気がついて、
周りから重宝がられている同世代の男の子や、
たまに話しかけてくれた洗い場のおばさん、
無愛想に見えた板前さんなど、
誰の名前も顔も覚えていないのだが、
とにかくいろんな種類の人が、
更衣室があるあの雑居ビルのように入り交じって
働いているんだなあと思った。

1ヶ月でアルバイトを辞めてしまった理由を
今ははっきりと思い出せないが、
アルバイトをして以来、客として一度
つな八で天ぷらが食べてみたいと思っていた。

自分が運んでいた天ぷらがどんな味なのか
食べてみたかった。

それで、昨日何となく京都高島屋のつな八に入ってみた。

高島屋のレストランフロアは最近リニューアルしてきれいになったので、
つな八の店内も、白木で美しく整えられていて、
新宿本店に漂っていた、油の染みこんだ感じが全くなかった。

時間帯のこともあったのだと思うが
新宿本店で流れていたような、せわしない空気が全くなく
板前さんもお給仕の人も落ち着いた接客だった。

アルバイトをしながら感じていた
あの慌ただしい感じは、自分が裏方としてそこにいたからだったのだろうか。
それとも、人が込み合う、新宿本店特有のものだったのだろうか。
by erimiyabayashi | 2011-01-14 15:10
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